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自筆証書遺言の問題となりやすい例

2021年6月1日

内容が不明確なことが多い

  • ①「私の財産を仲良く兄弟で分けること」
  • ②「〇〇銀行の普通預金の300万円を長男Aに相続させる(実際には、定期預金しかない)」
  • ③「我が家を長男に渡す。」「我が家を二男に託す。」

などです。これは実際によくある、遺言が機能しなかった例です。

①については、仲良く兄弟で分けると書いていても割合が特定されていないので、遺言として意味を持たない書き方となってしまっているケースです。

②については、内容がどれについて書いているのかなんとなく家族にはわかるけれども銀行の担当者からすると不明確なので、「この自筆証書遺言ではうちの銀行では手続きできません」と言われたりするケースです。

③については、我が家とはどの家なのか、不明確であるということです。別荘がある場合誰に相続させるのか、隣の駐車場として利用している土地は誰が取得するのか、その他の土地を誰に相続するのか分からないケースです。

つまり、内容が不明確・特定されていないため実務上使えないというケースです。

自筆証書遺言によって不利益を受ける方が隠匿する可能性がある

自筆証書遺言を発見した方が、仏壇から自筆証書遺言書を発見して読んだ場合、自分以外の方に財産が行くように書いてあったとき、その方が隠匿する可能性があります。

なぜなら、その遺言の存在を知っているのが自分の他にだれもいなかったら隠匿してしまえば、他の方は実際の所分からないからです。

もちろん、法律上では、自筆証書遺言書の隠匿をすることは、相続人の欠格事由(民法891条5号)として、自筆証書遺言書の隠匿行為をすることを予防しています。

しかし、現実に誰も見ていない所で自筆証書遺言書を隠されると監視カメラでも仕掛けていない限り隠したことが分かりません。

自筆証書遺言が無くなった(隠匿された)場合どうなるでしょうか。

これは通常の相続人間で遺産分割協議をすることになり、遺言はなかったものとして進められてしまうので、せっかく自筆証書遺言を書いた意味がなくなります。

遺言によって不利益を受ける方が、本人が自発的に書いた遺言ではないと争う

遺言は、遺言によって財産を得る方からすると良いものですが、遺言によって財産を得ない方については、気持ちの良いものではありません。

また、遺言で利益を受けなかった方がなぜそのような扱いを受けたのか理解できない場合には、遺言によって利益を受ける方に対して、何か指図したのだろうとか、無理やり書かせた、または、そそのかしたと言ってくることもあります。

自筆証書遺言によって字体は遺言者のものであるということは、認められても、それがどのような状況で書いたかまでは証明できません。

そのため、遺言自体を使えなくするために、遺言は無効であると不利益を受ける方が家庭裁判所に主張する可能性があります。

そうすると、いつまでも遺言書通りの結果は実現されず、遺言の執行ができない可能性があります。

自筆証書遺言は自宅に保管してあると、家庭裁判所の検認を行うのに1ヶ月以上かかる

自筆証書遺言を自宅に保管してある場合は、銀行の解約手続きや不動産登記をする際に、そのまま使えるものではありません。

ご存知の方も多いかもしれませんが、家庭裁判所への検認(民法1004条1項)という作業が必要になります。

検認とは、家庭裁判所で、その自筆証書遺言が遺言としての方式を満たしているか(外形を満たしているか)を判断するものです。

検認に出す際には、相続人が、自筆証書遺言の原本と相続に関する戸籍一式、検認に関する裁判所への申請書を揃えて出す必要があります。

相続に関する戸籍一式とは、一般的な配偶者と子が相続人のケースでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本です。

この戸籍収集と提出書類を作成するまでに少なくとも1か月くらいはかかります。その後、家庭裁判所に検認に出してから、呼び出しがあり、検印が押された書類を取得するまでにさらに1か月くらいかかります。

そうすると2ヶ月程度相続手続をしないで待っていなければならない状況が続きます。

遺言

Posted by watanabe